フィッシングボートやクルーザー、小型船舶を操縦して海のレジャーを楽しみたいと考えている方にとって、小型船舶免許の取得は必須のステップです。特に初心者におすすめなのが「2級小型船舶免許」ですが、「取得にはどのくらいの費用がかかるのか」「どんな手順で取るのか」などの疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、小型船舶免許2級の取得にかかる費用の相場や取得方法、試験内容などについて詳しく解説します。費用を抑えるコツや、信頼できる教習所の選び方についても触れていますので、これから船舶免許取得を検討している方はぜひ参考にしてください。
小型船舶免許2級の基本情報
2級小型船舶免許とは
2級小型船舶免許は、正式名称を「二級小型船舶操縦士免許」といい、小型船舶免許の中で最も一般的な免許です。この免許を持っていると、以下のような条件で船舶を操縦することができます。
- 航行できる範囲:平水区域(湾内や湖など)と海岸から5海里(約9.26km)以内の水域
- 操縦できる船の大きさ:総トン数20トン未満のプレジャーボート(24m未満)
- 取得可能年齢:16歳以上(16歳以上18歳未満の場合は5トン限定)
海岸線から近い範囲での釣りやクルージングを楽しみたい方には、十分な航行範囲を持つ免許です。また、ヤマハのレンタルボートクラブ「シースタイル」などに入会する場合も、この2級免許が必要となります。
1級小型船舶免許との違い
1級小型船舶免許と2級小型船舶免許の主な違いは以下の通りです。
項目 | 2級小型船舶免許 | 1級小型船舶免許 |
---|---|---|
航行範囲 | 平水区域および海岸から5海里以内 | すべての海域(沿岸80海里以上では機関士乗船が必要) |
学科試験内容 | 一般科目のみ(50問) | 一般科目(50問)+上級科目(14問) |
取得可能年齢 | 16歳以上 | 18歳以上 |
講習時間 | 学科12時間・実技4時間 | 学科24時間・実技4時間 |
1級免許は外洋航行が可能ですが、学科試験では2級よりも難易度の高い上級科目(海図の読み方や航海計算など)が追加されます。初めて船舶免許を取得する方は、まずは2級免許から取得するケースが多いです。
なお、両者とも水上バイク(ジェットスキー)の操縦はできないため、水上バイクに乗りたい場合は「特殊小型船舶操縦士免許」の取得が別途必要です。
小型船舶免許2級の取得費用相場
小型船舶免許2級の取得費用は、取得方法や教習所によって異なります。大きく分けると、「国家試験を受ける方法」と「国家試験免除で取得する方法」の2種類があります。
国家試験を受ける場合の費用(7〜9万円)
国家試験を受験して取得する場合の費用相場は、約7万円〜9万円です。この費用は以下のように内訳されます。
- 身体検査料:約3,450円
- 学科試験料:約3,550円
- 実技試験料:約18,900円
- 講習費:約4万円〜5万円
- 申請手数料:約2,000円
- 免許証交付手数料:約2,100円
メリット:
- 費用が比較的抑えられる
- 自分のペースで学習できる
デメリット:
- 試験に落ちた場合、追加費用が発生する
- 独学の場合、理解度に不安が残る場合がある
- 試験日程が限られており、日程調整が必要
国家試験免除(登録小型船舶教習所)で取得する場合の費用(10〜12万円)
国土交通省に登録された小型船舶教習所で講習を受け、修了試験に合格することで国家試験が免除される方法です。費用相場は約10万円〜12万円となります。
- 講習費(学科・実技含む):約9万円〜11万円
- 身体検査料:約3,450円
- 申請手数料:約2,000円
- 免許証交付手数料:約2,100円
メリット:
- 確実に免許を取得できる可能性が高い(合格率95%以上)
- 講習と試験が一体化しているため効率的
- 修了試験に落ちても追加料金なしで再受験できる場合が多い
デメリット:
- 国家試験受験よりも費用が高い
- 決められた日程で講習を受ける必要がある
地域による価格差
船舶免許の取得費用は地域によっても異なります。一般的に都市部では競争が激しいため比較的安価な場合もありますが、地方では選択肢が限られ若干高めの価格設定になっていることもあります。
例えば、ヤマハボート免許教室の場合、2級小型船舶免許のスマ免コースは103,600円(税込)からとなっています。一方、他の教習所では8万円台から取得できるところもあります。
格安で取得したい場合は、オフシーズン(冬季など)の割引キャンペーンを活用したり、複数の教習所の料金を比較検討することをおすすめします。ただし、極端に安い教習所は講習内容が薄い場合もあるため注意が必要です。
小型船舶免許2級の取得方法と流れ
小型船舶免許2級を取得するまでの一般的な流れは以下の通りです。
取得までのステップ
①申し込み・必要書類の準備
まずは希望する教習所や試験機関に申し込みを行います。必要な書類は以下の通りです。
- 住民票(本籍地記載のもの)
- 写真(縦4.5cm×横3.5cm)
- 身体検査証明書(教習所で受検可能な場合あり)
- 申請書類(教習所で記入)
②身体検査
視力、聴力、色覚などの検査を受けます。視力は両眼で0.5以上(片眼で0.3以上)、色覚は赤・緑・青の3色の識別ができること、聴力は5m離れた場所での話し声が聞こえることが基準です。
③学科講習(約12時間)
2級小型船舶免許の学科講習では、以下の3科目について学習します。
- 小型船舶操縦者の心得及び遵守事項
- 交通の方法
- 運航
近年ではオンラインで学科講習を受けられるコースも増えており、自宅で学習できる選択肢も広がっています。
④実技講習(約4時間)
実際にボートに乗り、操船技術や点検方法、ロープワーク、ハンドコンパスの使い方などを学びます。基本的な操縦方法や緊急時の対応、離着岸の方法などを実践的に学習します。
⑤試験または修了審査
国家試験を受ける場合:
学科試験(マークシート式50問)と実技試験を受験します。
国家試験免除の場合:
登録小型船舶教習所で規定の講習を修了後、修了審査を受けます。
⑥免許証の交付
試験または修了審査に合格すると、約2〜4週間後に免許証が交付されます。
取得にかかる日数
小型船舶免許2級の取得にかかる日数は、コースによって異なります。
- 最短取得日数:1〜2日(スマ免1日コースなど)
- 一般的な取得日数:2〜3日(レギュラーコース)
多くの教習所では週末コースも用意されており、土日を利用して取得することも可能です。ただし、免許証の発行までは試験日から約2〜4週間かかるため、実際に船を操縦できるようになるまでの期間も考慮しておく必要があります。
小型船舶免許2級の試験内容
学科試験の内容
2級小型船舶免許の学科試験は、マークシート式で50問出題されます。試験時間は70分で、以下の3科目から出題されます。
- 小型船舶操縦者の心得及び遵守事項(12問)
- 船長の責任と義務
- 安全運航のための基本事項
- 事故防止のための心構え
- 交通の方法(10問)
- 航行ルール
- 灯火と形象物
- 信号
- 運航(28問)
- 船体・機関の構造と取扱い
- 気象・海象
- 操船の方法
- 航海計器の取扱い
合格基準は、各科目50%以上かつ全体で65%以上(50問中33問以上)の正解が必要です。
実技試験の内容
実技試験では、実際にボートを操縦し、以下の項目が評価されます。
- 小型船舶の取扱い(60点)
- 出航前点検
- ロープワーク
- 基本操縦(120点)
- 発進・停止
- 直進
- 旋回
- 応用操縦(120点)
- 着岸
- 人命救助想定
- 障害物回避
合格基準は300点満点中180点以上(60%以上)で、かつ各科目の得点が基準点(配点の50%)以上である必要があります。
合格率と対策
2級小型船舶免許の合格率は非常に高く、約97%前後となっています。教習所の講習をしっかり受け、復習をすれば合格できる可能性は高いでしょう。
効果的な対策としては以下のようなものがあります。
- 講習で配布されるテキストを繰り返し読む
- 過去問題集を解いて試験の傾向を掴む
- 実技は基本操作を確実にマスターする
- 不明点はその場で講師に質問する
国家試験免除コースを選べば、講習内容に沿った修了審査となるため、より確実に合格を目指せます。
費用を抑えるコツ
船舶免許の取得費用を少しでも抑えたい方のために、いくつかのコツをご紹介します。
自習で学科を勉強する
国家試験を受験するコースでは、学科講習を自習に置き換えることで費用を抑えられます。テキストや問題集を購入して独学し、実技講習と試験だけを申し込むことで、総額を7万円前後に抑えることも可能です。
ただし、自習の場合は不明点を質問できないデメリットもあるため、船舶に関する基礎知識がある程度ある方や、学習能力に自信のある方向けと言えるでしょう。
複数の免許をセットで取得する
複数の船舶免許をセットで取得すると、単体で取るよりもお得になる場合が多いです。例えば以下のような組み合わせが人気です。
- 2級小型船舶免許+特殊小型船舶免許
水上バイク(ジェットスキー)にも乗りたい方向け - 1級小型船舶免許+特殊小型船舶免許
外洋航行と水上バイクの両方を楽しみたい方向け
セット割引が適用されると、単体で取得するよりも1〜2万円程度安くなるケースが多いです。
オフシーズンに取得する
船舶免許の取得希望者が多い春から夏にかけては料金が高めに設定されていることがあります。逆に11月〜3月頃のオフシーズンは、割引キャンペーンを実施している教習所も多いため、費用を抑えられる可能性があります。
格安教習所の選び方と注意点
近年、格安を謳う教習所も増えていますが、選ぶ際は以下の点に注意しましょう。
- 国土交通省登録の教習所かどうか
登録教習所でなければ国家試験免除は受けられません - 追加料金の有無
基本料金は安くても、追加で費用がかかるケースも - 講習の質と内容
極端に安い場合、講習時間や内容が不十分な可能性も
価格だけでなく、教習所の実績や口コミ、サポート体制などを総合的に判断することが大切です。
免許取得後の維持費用
小型船舶免許は取得して終わりではなく、定期的な更新が必要です。将来的にかかる費用も把握しておきましょう。
更新費用(1万円〜13,000円程度)
船舶免許は5年ごとに更新が必要で、更新には以下のような費用がかかります。
- 更新講習料:4,500円〜9,500円
- 身体検査料:800円〜1,000円
- 法定印紙代:1,350円
- 申請手数料:4,000円〜5,000円
更新は有効期限の1年前から可能で、早めに更新しても次の有効期限は現在の有効期限から5年後となります。更新を忘れると失効してしまうため、必ず期限内に手続きを行いましょう。
失効再交付費用(17,000円〜2万円程度)
更新を忘れて免許が失効してしまった場合は、失効再交付の手続きが必要です。費用の内訳は以下の通りです。
- 失効再交付講習料:9,500円〜10,300円
- 身体検査料:800円〜1,000円
- 法定印紙代:1,250円
- 申請手数料:5,250円〜8,250円
失効再交付講習は更新講習よりも時間が長く、費用も高めです。免許は失効しても資格自体が取り消されるわけではないので、何年経過していても再交付手続きは可能です。
紛失再発行費用(3,000円〜6,000円程度)
免許証を紛失した場合の再発行にかかる費用は3,000円〜6,000円程度です。紛失した状態で船舶を操縦すると、免許不携帯として10万円以下の過料に処せられる可能性があるため、紛失した場合は速やかに再発行手続きを行いましょう。
訂正費用(3,000円〜6,000円程度)
住所変更や氏名変更などにより免許証の記載内容を変更する場合は、訂正申請が必要です。費用は3,000円〜6,000円程度です。更新や失効再交付と同時に行う場合は、別途費用がかからないケースが多いです。
信頼できる教習所の選び方
船舶免許を取得する際は、信頼できる教習所を選ぶことが重要です。以下のポイントを参考に選びましょう。
国土交通省登録の教習所かどうか
国家試験免除コースを選ぶ場合は、必ず国土交通省に登録された小型船舶教習所を選びましょう。登録教習所でなければ、修了しても国家試験免除の対象にはなりません。教習所のウェブサイトや案内に「国土交通省登録教習所」と明記されているかを確認しましょう。
合格率の高さ
教習所の合格率は重要な指標です。一般的に2級小型船舶免許の合格率は95%以上と高いですが、教習所によって若干の差があります。合格率が90%を下回る教習所は講習内容や教育方法に不安がある可能性もあるため、可能であれば合格率のデータを確認しましょう。
アクセスの良さ
実技講習や試験のために複数回通う必要があるため、自宅や職場からアクセスしやすい場所にある教習所を選ぶと便利です。特に実技講習は港や湖など特定の場所で行われるため、その場所までの交通手段も考慮しましょう。
サポート体制の充実度
質問や不明点に丁寧に対応してくれるか、補習制度はあるか、試験に落ちた場合のサポートはどうなっているかなど、サポート体制の充実度も重要です。事前に電話やメールで問い合わせをしてみると、対応の良さを確認できます。
実技講習の質
実技講習は実際に船を操縦する上で非常に重要です。少人数制で丁寧な指導を行っているか、十分な練習時間が確保されているかなどをチェックしましょう。可能であれば、実際に使用する船舶の種類や状態も確認できるとベターです。
口コミや評判
インターネット上の口コミサイトや、知人で既に船舶免許を取得した方がいれば、その評判も参考にしましょう。特に講師の教え方や施設の状態、サポートの質などは実際に利用した人の意見が参考になります。
よくある質問(FAQ)
2級小型船舶免許で操縦できる船は?
2級小型船舶免許では、総トン数20トン未満(プレジャーボートは24m未満)の小型船舶を操縦できます。具体的には、モーターボート、ヨット、クルーザーなどが該当します。ただし、水上バイク(ジェットスキー)は特殊小型船舶操縦士免許が必要です。
試験は難しい?
2級小型船舶免許の合格率は97%前後と非常に高く、講習をしっかり受けて試験前に復習をしておけば難易度は高くありません。学科試験は基本的な知識を問う内容が中心で、実技試験も基本操作をマスターしていれば合格できる可能性が高いです。
講習と試験の違いは?
講習は船舶の知識や操縦技術を学ぶための教育課程で、試験は習得した知識や技術を評価する場です。国家試験受験コースでは講習を受けた後に別日程で国家試験を受けますが、国家試験免除コースでは講習修了後に修了審査を受け、これに合格すると国家試験が免除されます。
更新を忘れたらどうなる?
船舶免許の有効期限が過ぎると免許は失効しますが、資格自体が無効になるわけではありません。失効再交付手続きを行うことで再び免許証の交付を受けることができます。ただし、更新よりも手続きが複雑で費用も高くなるため、期限内の更新をおすすめします。
1級と2級どちらを取るべき?
初心者で沿岸部での航行が主な目的であれば、2級免許で十分です。外洋航行や本格的なクルージングを楽しみたい方は1級免許を取得するとよいでしょう。また、最初は2級を取得し、経験を積んでから1級にステップアップするという方法もあります。
特殊小型船舶免許との違いは?
特殊小型船舶免許は水上バイク(ジェットスキー)専用の免許で、陸岸から2海里以内での航行が可能です。2級小型船舶免許では水上バイクは操縦できないため、水上バイクに乗りたい場合は特殊小型船舶免許が必要です。ただし、特殊小型船舶免許ではボートなどの一般的な小型船舶は操縦できません。
まとめ

小型船舶免許2級の取得費用と手続きについて詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。
2級小型船舶免許の費用相場
- 国家試験受験コース:7〜9万円
- 国家試験免除コース:10〜12万円
取得のポイント
- 国家試験を受ける方法と、国家試験免除で取得する方法がある
- 講習は学科約12時間、実技約4時間が標準
- 最短1〜2日で取得可能なコースもある
- 合格率は約97%と高く、講習をしっかり受ければ合格の可能性は高い
- 費用を抑えるなら自習や複数免許のセット取得、オフシーズン取得がおすすめ
- 5年ごとの更新が必要(費用は1万円〜13,000円程度)
教習所選びのポイント
- 国土交通省登録の教習所を選ぶ
- 合格率やサポート体制を確認する
- アクセスの良さも考慮する
- 口コミや評判もチェックする
2級小型船舶免許を取得すれば、海岸から5海里以内の水域で20トン未満の船舶を操縦できるようになります。釣りやクルージングなど、海のレジャーを楽しむ幅が大きく広がるでしょう。
本記事の情報を参考に、ご自身に合った方法で船舶免許を取得し、安全で楽しいマリンライフをお楽しみください。
本記事の情報は2025年5月時点のものです。最新の費用や試験内容については、各教習所や国土交通省の公式サイトでご確認ください。