船舶を所有する上で避けて通れないのが「船検(船舶検査)」です。車検と同様に、船の安全性を確保するために定期的に受けなければならない重要な検査ですが、その費用について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2025年最新の船検費用について、JCI手数料から代行費用まで詳細に解説し、船のサイズ別シミュレーションや費用を安く抑える方法まで包括的にご紹介します。これから船舶購入を検討している方や、すでに船を所有している方にとって、計画的な船検費用管理の参考になれば幸いです。
船検とは?小型船舶に必要な検査制度
船検は、船舶の安全性を確保するために国が定めた検査制度です。船舶の構造、設備、性能が法定基準に適合しているかを定期的にチェックし、海上での安全航行を保証する重要な制度となっています。この章では、船検の基本的な仕組みから必要な条件、受検しなかった場合のリスクまで詳しく解説します。
船検の正式名称と検査機関(JCI)
船検の正式名称は「小型船舶検査」といい、日本小型船舶検査機構(JCI:Japan Craft Inspection Organization)が国の指定を受けて実施しています。JCIは昭和49年に設立された公的機関で、全国に支部を展開し、総トン数20トン未満の小型船舶の検査・登録業務を担当しています。
JCIが実施する検査には、定期検査、中間検査、臨時検査、臨時航行検査の4種類があり、それぞれ目的や内容が異なります。検査に合格すると「船舶検査証書」「船舶検査手帳」「船舶検査済票」が交付され、これらの書類は船舶への常時携帯が義務付けられています。
検査の際には、船体の構造、エンジンなどの機関部、操縦装置、安全設備、航海設備などが総合的にチェックされ、法定基準に適合しているかが厳格に審査されます。
船検が必要な船舶の条件
船検が必要となる船舶の条件は明確に定められています。総トン数20トン未満の小型船舶のうち、以下に該当するものが検査対象となります:
エンジン付き船舶では、船外機を搭載したボート、船内外機を搭載したクルーザー、ディーゼルエンジン搭載の漁船、水上オートバイ(ジェットスキー)などが対象です。また、エンジンがない船舶でも、長さ3メートル以上のヨット(帆船)、長さ3メートル以上の手漕ぎボート(業務用)、ゴムボートでも長さ3メートル以上のものは検査が必要です。
ただし、長さ3メートル未満かつエンジン出力2馬力以下の船舶、櫓櫂のみで運転する長さ3メートル未満の船舶、専ら競漕用に供するボート、救命艇などは検査対象外となります。
また、プレジャーボートや小型フィッシングボートを購入予定の方は、事前に船検の必要性を確認することが重要です。
船検を受けないとどうなる?罰則とリスク
船検を受けずに船舶を航行させた場合、船舶安全法違反となり重い罰則が科せられます。具体的には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
さらに、船検証書のない船舶で事故を起こした場合、保険が適用されない可能性が高く、多額の損害賠償責任を個人で負担することになりかねません。海上保安庁による立ち入り検査で船検の未受検が発覚した場合、航行停止命令が出され、その場で運航を中止しなければなりません。
また、船検を受けていない船舶の売却は非常に困難で、資産価値も大幅に下落します。船舶の安全性が保証されていないため、マリーナでの係留を断られるケースもあります。
これらのリスクを避けるためにも、船舶を所有する際は必ず適切な時期に船検を受けることが不可欠です。
【2025年最新】船検費用の詳細料金表
船検費用は、JCIに支払う公的な手数料が中心となりますが、その金額は船舶の大きさや定員数によって細かく設定されています。ここでは、2025年最新の料金体系について、検査の種類別に詳しく解説し、実際にどの程度の費用がかかるのかを明確にします。また、料金表を見る際のポイントや、追加で必要となる可能性がある費用についても説明します。
JCI手数料(公的費用)の内訳
JCI手数料は、国が定めた法定料金であり、全国一律の価格設定となっています。この手数料には、検査官の人件費、事務経費、証書発行費用などが含まれており、消費税は非課税です。
手数料の算定基準は、船舶の全長と旅客定員数の組み合わせによって決まります。例えば、同じ長さの船舶でも、定員が12名以下か13名以上かで料金が大きく変わります。これは、定員数が多いほど安全設備の要求事項が厳しくなり、検査内容も複雑になるためです。
支払い方法は、指定の金融機関への振込のみとなっており、現金での支払いはできません。振込手数料は申請者負担となるため、実際の費用は手数料に振込手数料を加えた金額になります。
定期検査の費用一覧表
定期検査は、新造船の初回検査や船舶検査証書の有効期間が満了した際に受ける最も重要な検査です。以下が2025年現在の定期検査手数料一覧です:
3メートル未満の船舶
- 全ての船舶:11,600円
3メートル以上5メートル未満の船舶
- 旅客定員12人まで:16,700円
- 旅客定員13人以上:27,800円
5メートル以上10メートル未満の船舶
- 旅客定員12人まで:24,300円
- 旅客定員13人以上:34,500円
10メートル以上20メートル未満の船舶
- 旅客定員12人まで:30,700円~43,400円
- 旅客定員13人以上:46,800円~63,400円
これらの費用は船舶の構造や設備の複雑さによって上下する場合があります。特に、特殊な推進装置を持つ船舶や、高度な電子機器を搭載した船舶では、追加の検査項目が必要となり、費用が上乗せされることがあります。
中間検査の費用一覧表
中間検査は、定期検査の有効期間中(通常3年目)に実施される簡易的な検査です。定期検査に比べて検査項目が限定されているため、費用も抑えられています:
3メートル未満の船舶
- 全ての船舶:5,100円
3メートル以上5メートル未満の船舶
- 旅客定員12人まで:8,200円
- 旅客定員13人以上:13,400円
5メートル以上10メートル未満の船舶
- 旅客定員12人まで:14,900円
- 旅客定員13人以上:23,200円
10メートル以上20メートル未満の船舶
- 旅客定員12人まで:19,200円~28,000円
- 旅客定員13人以上:29,300円~43,000円
中間検査では、主に安全設備の点検、エンジンの動作確認、船体の外観検査などが行われます。大掛かりな分解点検は行わないため、検査時間も定期検査より短くなります。
臨時検査・臨時航行検査の費用
臨時検査は、船舶の改造や主要部品の交換を行った際に必要となる検査で、費用は一律4,900円です。エンジンの換装、船体の大幅な改造、定員数の変更などが該当します。
臨時航行検査も同様に4,900円で、船舶検査証書を持たない船舶を一時的に航行させる場合に必要となります。中古船購入時や、船検が切れた船舶を整備工場まで回航する際などに利用されます。
これらの検査は、通常の定期検査や中間検査の時期と重なる場合は免除されることがあるため、タイミングを調整することで費用を節約できる可能性があります。
船舶を購入する際は、船購入完全ガイドで詳しい手続きを確認し、船検費用も含めた総合的な予算計画を立てることをお勧めします。
船検代行サービスの費用相場
船検は自分で申請・立会いを行うことも可能ですが、多くの船舶オーナーは専門業者による代行サービスを利用しています。代行サービスを利用することで、複雑な手続きや検査への立会いを任せることができ、時間と労力を大幅に節約できます。この章では、代行手数料の相場から業者選びのポイントまで、代行サービスに関する重要な情報をお伝えします。
代行手数料の相場と地域差
船検代行手数料は、地域や業者によって大きく異なりますが、一般的な相場は以下の通りです:
小型船舶(3m未満)
- 代行手数料:8,000円~15,000円
- 都市部:12,000円~18,000円
- 地方:8,000円~12,000円
中型船舶(3m以上10m未満)
- 代行手数料:12,000円~22,000円
- 都市部:18,000円~25,000円
- 地方:12,000円~18,000円
大型船舶(10m以上)
- 代行手数料:20,000円~35,000円
- 都市部:25,000円~40,000円
- 地方:20,000円~30,000円
地域差が生じる主な理由は、人件費の違い、競合業者の数、マリーナや検査場所までの距離などです。東京湾、大阪湾周辺などの都市部では需要が高く、料金も高めに設定される傾向があります。
一方、地方では競争が少ないものの、移動距離が長くなる場合は別途交通費が請求されることもあります。また、離島や交通の便が悪い地域では、さらに割増料金が設定される場合があります。
セルフ船検 vs 代行のメリット・デメリット
セルフ船検のメリット
- 代行手数料(8,000円~35,000円)の節約
- 自分の船の状態を詳しく把握できる
- 検査内容や基準について学習できる
- 検査官との直接コミュニケーションが可能
セルフ船検のデメリット
- 事前準備に相当な時間が必要
- 法規制や検査基準の知識が必要
- 書類作成や手続きが煩雑
- 不合格リスクが高い
- 平日の日中に時間を確保する必要
代行サービスのメリット
- 専門知識不要で手間が省ける
- 高い合格率(95%以上)
- 不合格時の再検査も対応
- 必要書類の準備も代行
- スケジュール調整が柔軟
代行サービスのデメリット
- 代行手数料が必要
- 自分の船の詳細な状態把握が困難
- 業者選びに失敗すると品質に問題
- 緊急時の対応が限定的
初回の船検や複雑な検査が必要な場合は代行サービスの利用を、2回目以降で船の状態に自信がある場合はセルフ船検を検討するのが一般的です。
優良代行業者の選び方
船検代行業者選びでは、以下のポイントを重視することが重要です:
実績と信頼性の確認
- 創業年数と実績件数
- JCIや関連団体での認定状況
- 過去のトラブル履歴
- 地域での評判
料金体系の透明性
- 明確な料金表示
- 追加費用の有無と条件
- 支払い方法の選択肢
- 見積もりの詳細度
サービス内容の充実度
- 事前点検サービスの有無
- 不合格時の対応方針
- アフターサポートの内容
- 緊急時の連絡体制
対応エリアとアクセス
- 自分の係留地への対応可否
- 出張費用の有無
- 複数拠点での対応可能性
複数の業者から見積もりを取り、料金だけでなくサービス内容も比較検討することが重要です。最安値の業者が必ずしも最良とは限らないため、総合的な判断が必要です。
また、プレジャーボート保険を扱う業者の中には、船検代行サービスも提供している場合があり、セット割引を受けられることもあります。
船のサイズ別!船検費用シミュレーション

船検費用は船舶のサイズによって大きく異なります。ここでは、代表的な船舶サイズごとに、JCI手数料と代行費用を合わせた総額をシミュレーションし、年間コストとしてどの程度の負担になるかを具体的に算出します。これから船舶購入を検討している方にとって、予算計画の参考になる実践的な情報をお届けします。
小型ボート(3m未満)の船検費用
3メートル未満の小型ボートは、主に水上バイクや小型の釣り用ボートが該当します。法規制上は最もシンプルな扱いとなるため、船検費用も最も抑えられます。
JCI手数料(6年サイクル)
- 定期検査:11,600円
- 中間検査:5,100円
- 6年間合計:16,700円
代行費用(利用する場合)
- 定期検査代行:12,000円
- 中間検査代行:8,000円
- 6年間合計:20,000円
総費用シミュレーション
- セルフ船検の場合:16,700円(6年間)
- 代行利用の場合:36,700円(6年間)
- 年間コスト:約2,800円~6,100円
3メートル未満の船舶では、検査項目も比較的シンプルなため、セルフ船検にチャレンジしやすいサイズです。ただし、水上バイクの場合は特殊な構造のため、初回は代行サービスの利用を検討することをお勧めします。
プレジャーボート(20フィート級)の船検費用
20フィート級(約6メートル)のプレジャーボートは、レジャー用途で最も人気の高いサイズです。定員は通常8~10名程度で、日帰りクルージングや近海釣りに適しています。
JCI手数料(6年サイクル)
- 定期検査:24,300円
- 中間検査:14,900円
- 6年間合計:39,200円
代行費用(利用する場合)
- 定期検査代行:18,000円
- 中間検査代行:12,000円
- 6年間合計:30,000円
その他関連費用
- 上下架料(検査時):15,000円×2回=30,000円
- 法定備品更新費:20,000円(6年間)
総費用シミュレーション
- セルフ船検の場合:89,200円(6年間)
- 代行利用の場合:119,200円(6年間)
- 年間コスト:約15,000円~20,000円
このサイズになると、上下架費用や法定備品の更新費用も考慮する必要があります。プレジャーボートの人気ランキングでも上位にランクインするサイズで、維持コストのバランスが良いとされています。
中型クルーザー(30フィート級)の船検費用
30フィート級(約9メートル)の中型クルーザーは、宿泊可能な設備を持ち、本格的なマリンレジャーを楽しめるサイズです。定員は12~15名程度で、検査内容も複雑になります。
JCI手数料(6年サイクル)
- 定期検査:30,700円(定員12名以下)/46,800円(定員13名以上)
- 中間検査:19,200円(定員12名以下)/29,300円(定員13名以上)
- 6年間合計:49,900円~76,100円
代行費用(利用する場合)
- 定期検査代行:25,000円
- 中間検査代行:18,000円
- 6年間合計:43,000円
その他関連費用
- 上下架料(検査時):25,000円×2回=50,000円
- 法定備品更新費:40,000円(6年間)
- 特殊設備検査費:10,000円(該当する場合)
総費用シミュレーション
- セルフ船検の場合:139,900円~166,100円(6年間)
- 代行利用の場合:182,900円~209,100円(6年間)
- 年間コスト:約23,000円~35,000円
30フィート級では、居住設備、給排水設備、電気設備などの検査項目が増加し、専門知識が必要になるため、代行サービスの利用が一般的です。
大型船舶の船検費用
40フィート(約12メートル)を超える大型船舶では、検査内容がさらに複雑になり、特殊な資格を持つ検査官による検査が必要な場合もあります。
JCI手数料(6年サイクル)
- 定期検査:43,400円(定員12名以下)/63,400円(定員13名以上)
- 中間検査:28,000円(定員12名以下)/43,000円(定員13名以上)
- 6年間合計:71,400円~106,400円
代行費用(利用する場合)
- 定期検査代行:35,000円
- 中間検査代行:25,000円
- 6年間合計:60,000円
その他関連費用
- 上下架料(検査時):40,000円×2回=80,000円
- 法定備品更新費:60,000円(6年間)
- 特殊設備検査費:20,000円
- 専門検査官費用:15,000円
総費用シミュレーション
- セルフ船検の場合:246,400円~281,400円(6年間)
- 代行利用の場合:306,400円~341,400円(6年間)
- 年間コスト:約41,000円~57,000円
大型船舶では、船検費用だけでなく船の維持費全体が高額になるため、総合的な予算計画が重要です。また、大型ヨットの種類によって検査内容も異なるため、事前の確認が不可欠です。
船検の種類と受検タイミング
船検には複数の種類があり、それぞれ実施するタイミングや目的が異なります。適切なタイミングで適切な検査を受けることは、船舶の安全性確保と法令遵守の観点から極めて重要です。この章では、各検査の具体的な内容と実施時期、準備すべき事項について詳しく解説し、船舶オーナーが適切な検査スケジュールを組めるよう支援します。
定期検査(6年ごと)の内容と流れ
定期検査は船検の中で最も重要かつ包括的な検査で、船舶の安全性を総合的に評価します。新造船の場合は初回登録時に、既存船舶の場合は船舶検査証書の有効期限満了時に実施されます。
検査の主な内容
- 船体構造の詳細検査(亀裂、腐食、変形の確認)
- エンジン・推進装置の性能試験
- 操縦装置・舵の動作確認
- 電気系統の絶縁性能テスト
- 安全設備の機能確認(救命設備、消火設備、信号設備)
- 航海設備の動作確認
- 排出ガス・騒音レベルの測定
検査の流れ
- 事前申請(検査希望日の2週間前まで)
- 船舶検査申請書の提出
- 手数料の振込
- 必要書類の準備
- 事前準備(検査前日まで)
- 船体・エンジンの清掃
- 法定備品の点検・補充
- 上下架の手配(必要な場合)
- 検査当日(所要時間:2~4時間)
- 書類確認
- 船体外観検査
- エンジン始動・性能試験
- 各種設備の動作確認
- 法定備品の確認
- 検査結果と証書交付
- 合格:船舶検査証書等の交付
- 不合格:指摘事項の改善後再検査
定期検査は最も厳格な検査のため、事前の準備が合格の鍵となります。
中間検査(3年目)の内容と流れ
中間検査は、定期検査から3年後に実施される簡易検査です。定期検査ほど詳細ではありませんが、船舶の安全性を継続的に確認する重要な検査です。
検査の主な内容
- 船体外観の目視検査
- エンジンの始動確認
- 安全設備の外観・数量確認
- 航海設備の基本動作確認
- 船舶検査手帳の記録確認
定期検査との違い
- 検査時間が短い(1~2時間程度)
- 分解点検は行わない
- 性能試験は簡易的
- 上下架は通常不要
- 費用が安い
検査の流れ 中間検査の流れは定期検査と基本的に同じですが、事前準備の負担は軽減されます:
- 事前申請(検査希望日の1週間前まで)
- 船舶検査申請書の提出
- 手数料の振込(定期検査の約半額)
- 事前準備(検査前日まで)
- 船体の清掃(外観のみ)
- 法定備品の数量確認
- エンジンの始動確認
- 検査当日(所要時間:1~2時間)
- 書類確認
- 外観検査
- エンジン始動確認
- 安全設備の目視確認
中間検査は比較的合格しやすい検査ですが、定期的なメンテナンスを怠っていると指摘事項が発生する可能性があります。
臨時検査が必要になるケース
臨時検査は、船舶に何らかの変更や修理を行った際に必要となる検査です。以下のような場合に受検が義務付けられています:
主要な改造・変更
- エンジンの換装(出力変更を伴う場合)
- 船体の大幅な改造(キャビンの増設など)
- 定員数の変更
- 航行区域の変更申請
- 用途変更(漁船からプレジャーボートへなど)
重大な修理
- 船体の大規模な損傷修理
- エンジンの重要部品交換
- 推進装置の交換
- 操縦装置の大幅な修理
設備の大幅な変更
- 安全設備の種類・数量変更
- 電気系統の大幅な改修
- 燃料系統の変更
検査のタイミング 臨時検査は変更・修理完了後、船舶を使用する前に受検する必要があります。検査を受けずに航行すると法令違反となるため注意が必要です。
ただし、定期検査や中間検査の時期と重なる場合は、臨時検査が免除される場合があります。修理や改造を予定している場合は、検査スケジュールとの調整を検討することで費用を節約できます。
船検にかかるその他の費用
船検費用として多くの方がJCI手数料のみを想定しがちですが、実際には検査に付随する様々な費用が発生します。これらの「隠れたコスト」を事前に把握しておくことで、予算オーバーを防ぎ、計画的な船検を実施できます。この章では、船検に伴って発生する主要な関連費用について詳しく解説し、総合的な船検予算の組み方をお伝えします。
上下架料金の相場
多くの船舶は海上係留されているため、船検時には陸上に上げる「上下架」作業が必要になります。この上下架料金は船検費用の中でも大きな割合を占める項目です。
船舶サイズ別上下架料金
- 小型船(~20フィート):8,000円~15,000円/回
- 中型船(20~30フィート):15,000円~25,000円/回
- 大型船(30~40フィート):25,000円~40,000円/回
- 超大型船(40フィート~):40,000円~60,000円/回
地域別の料金差
- 都市部マリーナ:相場の1.2~1.5倍
- 地方マリーナ:相場通り
- 漁港施設:相場の0.7~0.9倍
追加料金が発生するケース
- 夜間・休日作業:20~50%割増
- 特殊形状船舶:10~30%割増
- 緊急上下架:50~100%割増
- 長期陸置き:1日あたり1,000円~3,000円
上下架は検査開始時と終了時の2回必要になるため、実際の費用は上記金額の2倍になります。年間を通じて計画的に実施すれば、オフシーズン割引を受けられる場合もあります。
法定備品の更新・修理費用
船検では法定備品の点検も厳格に行われ、有効期限切れや機能不良が発見された場合は更新・修理が必要です。
主要な法定備品と更新費用
- 救命胴衣:3,000円~15,000円/個(5年程度で交換推奨)
- 消火器:5,000円~12,000円/個(5年で交換義務)
- 信号紅炎:3,000円~8,000円/セット(3年で有効期限切れ)
- 救命浮環:8,000円~15,000円/個(劣化により交換)
- 笛・汽笛:1,000円~5,000円/個(機能不良時)
電子機器の更新費用
- 無線機:30,000円~100,000円(故障時)
- GPS・魚探:50,000円~200,000円(故障・陳腐化時)
- 航海灯:5,000円~20,000円/セット(LED化推奨)
定期的な法定点検費用
- 救命いかだ点検:50,000円~100,000円(年次点検)
- 無線機定期点検:10,000円~30,000円(年次)
- 消火設備点検:20,000円~50,000円(年次)
法定備品の更新費用は予測が困難ですが、船検前に事前点検を行うことで計画的な更新が可能です。特に、プレジャーボートの維持費として年間予算に組み込んでおくことが重要です。
書類作成・手続き費用
船検には多くの書類が必要で、これらの作成や取得にも費用がかかります。
必要書類と取得費用
- 船舶検査申請書:無料(JCIサイトからダウンロード)
- 船舶登録事項証明書:450円/通
- 印鑑証明書:300円~450円/通(各市区町村により異なる)
- 委任状用印紙:200円~400円
- 測度証明書:2,400円/通(必要な場合)
代行業者による書類作成費
- 基本書類作成:3,000円~8,000円
- 複雑な変更手続き:10,000円~20,000円
- 測度関連書類:15,000円~30,000円
郵送・交通費
- 書類郵送費:1,000円~3,000円
- 検査場への交通費:実費
- 代行業者出張費:5,000円~15,000円
その他の手続き費用
- 振込手数料:220円~880円(銀行により異なる)
- 証明写真代:500円~1,000円(必要な場合)
- コピー代:10円~50円/枚
これらの費用は個別には少額ですが、積み重なると意外な負担になります。特に初回船検や複雑な変更手続きが伴う場合は、書類関連費用として10,000円~30,000円程度を見込んでおくことをお勧めします。
セルフ船検を選択する場合は、これらの書類を自分で準備する必要があるため、事前に必要書類リストを確認し、取得スケジュールを立てることが重要です。一方、代行サービスを利用する場合は、書類作成費用も含めた総額での比較検討を行うことで、より正確な費用把握が可能になります。
船検費用を安く抑える5つの方法
船検費用は決して安くはありませんが、適切な知識と準備により大幅な節約が可能です。ここでは、実際に多くの船舶オーナーが実践している効果的な費用削減方法を5つご紹介します。これらの方法を組み合わせることで、船検費用を30~50%削減することも可能です。ただし、安全性を犠牲にしない範囲での節約が大前提となります。
①セルフ船検で代行費用を節約
セルフ船検は最も効果的な節約方法で、代行手数料(8,000円~35,000円)を丸ごと節約できます。
セルフ船検に必要な準備
- 法規制の学習:船舶安全法、小型船舶検査規則の基礎知識
- 検査基準の理解:各種設備の合格基準
- 書類作成スキル:申請書類の正確な記入方法
- 船舶知識:自分の船の構造・設備の詳細把握
初心者向けセルフ船検ガイド
- 情報収集(検査の1ヶ月前)
- JCI公式サイトの検査情報確認
- 検査基準書のダウンロード・熟読
- 同型船オーナーからの情報収集
- 事前準備(検査の2週間前)
- 船体・エンジンの徹底清掃
- 法定備品の点検・補充
- 必要書類の準備・確認
- 模擬検査(検査の1週間前)
- 検査項目のセルフチェック
- 不具合箇所の事前修理
- 検査当日の流れを確認
セルフ船検の成功率を上げるコツ
- 初回は簡単な中間検査から始める
- 経験者に同行してもらう
- 事前に検査場を見学する
- 余裕を持ったスケジュールを組む
セルフ船検は節約効果が高い反面、不合格リスクもあるため、十分な準備が必要です。
②複数業者の見積もり比較
代行サービスを利用する場合は、複数業者からの見積もり取得が必須です。同じ検査内容でも業者により料金が大きく異なる場合があります。
効果的な見積もり比較方法
- 最低3社から見積もり取得:料金相場の把握
- 詳細な内訳確認:隠れた費用の発見
- サービス内容の比較:料金だけでなく品質も重視
- 過去の実績確認:信頼性の評価
見積もり取得時のポイント
【確認すべき項目】
✓ 基本代行手数料
✓ 出張費・交通費
✓ 書類作成費用
✓ 上下架手配費
✓ 緊急時対応費
✓ 不合格時の再検査費用
✓ 支払い条件・方法
業者選定の判断基準
- 総費用:35%
- 実績・信頼性:25%
- サービス内容:20%
- 対応の質:15%
- アフターサポート:5%
最安値業者が必ずしも最良とは限らないため、総合的な判断が重要です。
③事前メンテナンスで一発合格を目指す
検査の不合格は再検査費用(通常料金の50~100%)が発生するため、事前メンテナンスによる一発合格が重要です。
よくある不合格項目と対策
- エンジン関連(30%)
- オイル交換・フィルター交換
- 冷却水系統の点検
- 燃料系統の清掃
- 安全設備(25%)
- 救命胴衣の数量・状態確認
- 消火器の有効期限確認
- 信号紅炎の期限確認
- 船体・外観(20%)
- 船底の清掃・塗装
- 船名表示の確認
- ハル・デッキの損傷修理
- 電気系統(15%)
- 航海灯の動作確認
- 配線の絶縁確認
- バッテリーの点検
- 書類・手続き(10%)
- 必要書類の不備
- 記入ミス・押印忘れ
事前チェックリスト
【検査1ヶ月前】
□ エンジンオイル・ギアオイル交換
□ 燃料フィルター交換
□ 船底清掃・防汚塗装
□ 法定備品の期限確認
【検査1週間前】
□ エンジン始動テスト
□ 各種電気系統の動作確認
□ 船体の最終清掃
□ 必要書類の最終確認
事前メンテナンスには費用がかかりますが、再検査リスクを考えると十分に投資効果があります。
④マリーナの割引サービスを活用
多くのマリーナでは、係留契約者向けの船検関連割引サービスを提供しています。
主な割引サービス
- 上下架料金割引:10~30%割引
- 代行業者紹介割引:5~15%割引
- 団体検査割引:複数艇同時検査で10~20%割引
- メンバーシップ割引:年会費制で各種サービス割引
マリーナ施設の活用
- 工具・設備の貸出:セルフメンテナンス支援
- 技術相談サービス:専門スタッフによるアドバイス
- 部品調達代行:法定備品の一括購入割引
割引サービスの探し方
- マリーナ事務所での直接相談
- 定期発行の会報・お知らせ確認
- 他の係留者からの情報収集
- マリーナ主催イベントでの情報交換
マリーナの割引サービスは意外に知られていないことが多いため、積極的に情報収集することが重要です。
⑤検査時期を調整してコスト削減
検査時期の調整により、様々な費用削減効果が期待できます。
オフシーズン割引の活用
- 冬季割引(12月~2月):上下架料金10~20%割引
- 平日割引:代行手数料5~10%割引
- 閑散期割引:マリーナサービス全般で割引
計画的な検査スケジュール
- 定期検査と中間検査の同時実施:移動費・手数料の一部削減
- 修理・改造との同時実施:臨時検査費用の削減
- 複数艇の同時検査:代行業者の出張費削減
時期調整による副次効果
- 検査場の混雑回避による迅速な対応
- 代行業者の余裕あるスケジューリング
- 法定備品の計画的な調達
年間スケジューリングの例
【最適な検査時期】
春(4-5月):使用開始前の点検を兼ねる
秋(10-11月):使用終了後の総点検を兼ねる
【避けたい時期】
夏季(7-8月):繁忙期で料金高騰
年末年始:休業による日程調整困難
検査時期の調整は、他の船舶メンテナンススケジュールとの調整も重要で、クルーザーの維持費全体を考慮した年間計画が効果的です。
これら5つの方法を適切に組み合わせることで、船検費用を大幅に削減しながら、安全で確実な船検を実施することが可能になります。
船検以外の維持費も含めた年間コスト
船舶所有には船検費用以外にも多くの維持費が必要です。船検費用は船舶維持費全体の一部に過ぎず、保険料、保管料、燃料費、メンテナンス費用など、継続的に発生する費用を総合的に把握することが重要です。この章では、船舶所有の年間維持費全体像を明らかにし、船検費用の位置づけを含めた現実的な予算計画の立て方をお伝えします。
船舶保険料の相場
船舶保険は法的には任意ですが、海上での事故リスクを考えると実質的に必須の費用です。自動車とは異なり自賠責保険がないため、任意保険がすべての補償をカバーします。
保険の種類と年間保険料
対人対物賠償責任保険
- 20フィート級:25,000円~40,000円/年
- 30フィート級:40,000円~60,000円/年
- 40フィート級以上:60,000円~100,000円/年
- 保険金額:1億円~無制限
船体保険
- 保険料率:船価の2~5%/年
- 新艇(3年未満):船価の2~3%
- 中古艇(3~10年):船価の3~4%
- 古い艇(10年超):船価の4~5%
搭乗者傷害保険
- 基本プラン:10,000円~20,000円/年
- 充実プラン:20,000円~40,000円/年
- 補償額:死亡時300万円~1,000万円
特約保険
- 捜索救助費用:5,000円~15,000円/年
- レッカー・引き上げ費用:3,000円~10,000円/年
- 個人賠償責任:2,000円~8,000円/年
船舶サイズ別保険料総額
- 20フィート級:年間50,000円~100,000円
- 30フィート級:年間80,000円~150,000円
- 40フィート級以上:年間150,000円~300,000円
保険料は船舶の種類、使用海域、オーナーの経験によっても変動します。プレジャーボート保険の基礎知識で詳細な選び方を確認することをお勧めします。
保管料(マリーナ・係留費)の相場
船舶保管料は維持費の中で最も大きな割合を占める項目です。保管方法や立地により費用が大きく異なります。
海上係留(年間契約)
都市部マリーナ(東京湾・大阪湾周辺)
- 20フィート級:400,000円~600,000円/年
- 30フィート級:600,000円~1,000,000円/年
- 40フィート級以上:1,000,000円~2,000,000円/年
地方マリーナ
- 20フィート級:200,000円~400,000円/年
- 30フィート級:300,000円~600,000円/年
- 40フィート級以上:500,000円~1,200,000円/年
漁港係留(組合員の場合)
- 20フィート級:50,000円~150,000円/年
- 30フィート級:100,000円~250,000円/年
- 40フィート級以上:200,000円~400,000円/年
陸上保管(年間契約)
- 上下架料別:海上係留料金の1.2~1.5倍
- 上下架料込:海上係留料金の1.5~2.0倍
追加施設利用料
- 電気・水道使用料:月額2,000円~5,000円
- クラブハウス利用料:月額3,000円~10,000円
- 駐車場料金:月額5,000円~15,000円
- セキュリティ料金:月額1,000円~3,000円
保管場所選びは利便性とコストのバランスが重要で、使用頻度に応じた最適解を見つけることが大切です。
燃料費・メンテナンス費用
燃料費とメンテナンス費用は使用頻度により大きく変動する変動費ですが、安全な航行のために欠かせない費用です。
燃料費(月2回使用の場合)
2ストロークエンジン
- 60馬力:年間約350,000円
- 100馬力:年間約450,000円
- 200馬力:年間約700,000円
4ストロークエンジン
- 60馬力:年間約180,000円
- 100馬力:年間約250,000円
- 200馬力:年間約400,000円
最新EFIエンジン
- 60馬力:年間約140,000円
- 100馬力:年間約200,000円
- 200馬力:年間約320,000円
定期メンテナンス費用
エンジン関連(年間)
- オイル交換:15,000円~30,000円
- ギアオイル交換:5,000円~15,000円
- フィルター類交換:8,000円~20,000円
- 点火プラグ交換:3,000円~10,000円
- 冷却水ポンプ関連:10,000円~25,000円
船体関連(年間)
- 船底塗装:30,000円~100,000円(2年に1回)
- 船底清掃:40,000円~120,000円(年4回)
- バッテリー交換:15,000円~30,000円(3年に1回)
- その他消耗品:20,000円~50,000円
年間メンテナンス費用総額
- 20フィート級:150,000円~300,000円
- 30フィート級:250,000円~500,000円
- 40フィート級以上:400,000円~800,000円
船舶所有の年間維持費総額
これまでの費用を総合すると、船舶所有の年間維持費は以下のようになります:
20フィート級プレジャーボート
- 船検費用:15,000円~20,000円
- 保険料:50,000円~100,000円
- 保管料:200,000円~600,000円
- 燃料費:140,000円~350,000円
- メンテナンス費:150,000円~300,000円
- 年間総額:555,000円~1,370,000円
30フィート級クルーザー
- 船検費用:23,000円~35,000円
- 保険料:80,000円~150,000円
- 保管料:300,000円~1,000,000円
- 燃料費:200,000円~450,000円
- メンテナンス費:250,000円~500,000円
- 年間総額:853,000円~2,135,000円
40フィート級大型クルーザー
- 船検費用:41,000円~57,000円
- 保険料:150,000円~300,000円
- 保管料:500,000円~2,000,000円
- 燃料費:320,000円~700,000円
- メンテナンス費:400,000円~800,000円
- 年間総額:1,411,000円~3,857,000円
これらの数字から分かるように、船検費用は維持費全体の2~5%程度に過ぎません。船舶購入を検討する際は、購入価格だけでなく年間維持費全体を考慮した予算計画が不可欠です。
また、新艇のプレジャーボート価格と維持費のバランスを考慮し、自分の使用頻度や予算に適したサイズを選択することが重要です。
船検に関するよくある質問(FAQ)
船検に関しては、初心者から経験者まで多くの疑問が寄せられます。ここでは、実際に多くの船舶オーナーが抱く代表的な質問と、その詳細な回答をまとめました。これらの情報を事前に把握しておくことで、トラブルを避け、スムーズな船検を実施できるでしょう。
船検の有効期限を過ぎてしまった場合は?
船検の有効期限が過ぎた船舶は、法的には航行禁止状態となります。この状況への対処法は以下の通りです:
immediate対応が必要な理由
- 航行すると船舶安全法違反(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)
- 保険が適用されない可能性が高い
- 海上保安庁の検査で発覚すると航行停止命令
期限切れ後の対処手順
- 即座に航行を停止:現在地で係留・陸揚げ
- JCI支部に連絡:状況説明と検査予約
- 臨時航行検査の検討:整備工場への回航が必要な場合
- 定期検査の受検:通常通りの検査を実施
費用について
- 期限切れでも追加料金は発生しない
- ただし、臨時航行検査が必要な場合は4,900円が追加
- 長期間放置していた場合、整備費用が高額になる可能性
期限切れを防ぐ対策
- 船舶検査手帳に記載された次回検査時期の確認
- 検査予定日の3ヶ月前にリマインダー設定
- マリーナや代行業者からの通知サービス活用
期限切れは思わぬトラブルの原因となるため、計画的な検査スケジュール管理が重要です。
中古船購入時の船検費用は誰が負担?
中古船売買における船検費用の負担については、法的な決まりはなく、売買契約の内容によって決まります。
一般的な負担パターン
売主負担のケース(約60%)
- 船検証書有効期限内での引き渡し契約
- 「船検付き」として販売される場合
- 販売業者が売主の場合(サービスの一環)
買主負担のケース(約30%)
- 「現状渡し」契約の場合
- 個人間売買で価格重視の場合
- 船検切れ承知での購入の場合
分担するケース(約10%)
- 売主:検査費用、買主:登録変更費用
- 時期による調整(期限まで短い場合は売主負担等)
契約書での明記事項
【記載すべき内容】
・船検費用の負担者
・検査時期と有効期限
・不合格時の対応
・登録変更手続きの責任者
・引き渡し時の船舶状態
購入前の確認ポイント
- 現在の船舶検査証書の有効期限
- 直近の検査記録と指摘事項
- 法定備品の状態と有効期限
- 未解決の整備事項の有無
中古船購入時は、船検費用だけでなく、購入後すぐに必要となる整備費用も含めて予算計画を立てることが重要です。
船検に不合格になった場合の対処法
船検の不合格は決して珍しいことではありません。適切に対処すれば、大きな問題にはなりません。
不合格時の流れ
- 検査結果通知書の受領:指摘事項の詳細確認
- 改善期間の確認:通常30日以内(場合により延長可能)
- 改善作業の実施:指摘事項の修理・整備
- 再検査の申請:改善完了後にJCIに連絡
- 再検査の実施:指摘事項のみの部分検査
主な不合格理由と対処法
エンジン関連(全体の30%)
- 指摘:始動不良、異音、排ガス規制違反
- 対処:エンジン整備、オイル交換、燃料系統清掃
- 費用:20,000円~100,000円
安全設備不備(25%)
- 指摘:救命胴衣不足、消火器期限切れ、信号紅炎期限切れ
- 対処:法定備品の購入・更新
- 費用:10,000円~50,000円
船体・外観(20%)
- 指摘:船名表示不備、船体損傷、塗装剥離
- 対処:表示修正、損傷修理、塗装修理
- 費用:5,000円~200,000円
電気系統(15%)
- 指摘:航海灯不点灯、配線不良、接地不良
- 対処:電球交換、配線修理、接地改善
- 費用:3,000円~50,000円
書類・手続き(10%)
- 指摘:書類不備、記入ミス、印鑑相違
- 対処:書類再提出、記入修正
- 費用:数百円~3,000円
再検査費用
- 部分再検査:通常検査料の50%程度
- 全体再検査:通常検査料と同額
- 代行業者利用時:再検査代行料も発生
不合格を避けるコツ
- 事前の模擬検査実施
- 法定備品の期限管理
- 定期的なメンテナンス
- 経験者からのアドバイス
船を売却する際の船検証書の扱い
船舶売却時における船検証書の扱いは、売買契約と登録変更手続きに直接関わる重要な事項です。
船検証書の法的位置づけ
- 船舶の所有権と直接連動
- 新所有者への移転が必要
- 売却時点での有効性が資産価値に影響
売却手続きの流れ
- 売買契約の締結:船検証書の有効期限確認
- JCIへの変更登録申請:所有者変更手続き
- 船検証書の名義変更:新所有者名での再交付
- 船舶検査手帳の引き継ぎ:検査履歴の継承
必要書類と費用
- 変更登録申請書:無料
- 譲渡証明書:売主が作成
- 新所有者の印鑑証明書:450円
- 登録手数料:4,900円~21,700円(船舶サイズにより変動)
船検有効期限と売却価格
- 有効期限2年以上:価格への影響最小
- 有効期限1年以内:10~20%の価格減額
- 船検切れ:30~50%の価格減額
売主として注意すべき点
- 引き渡し前の最終点検実施
- 法定備品の状態確認
- 検査記録の整理・引き継ぎ
- 保険解約のタイミング調整
船検と車検の違いは?
船検と車検は同じ安全検査ですが、多くの違いがあります。
検査間隔の違い
- 船検:定期検査6年、中間検査3年目
- 車検:新車3年、以降2年ごと
検査機関の違い
- 船検:JCI(日本小型船舶検査機構)のみ
- 車検:国の機関、指定工場、認証工場など複数選択肢
検査内容の違い
- 船検:構造、機関、安全設備、環境基準
- 車検:安全性、環境性能、外観
費用構造の違い
- 船検:手数料固定、代行料は業者により変動
- 車検:重量税、自賠責保険料含む、整備費用変動大
不合格時の扱い
- 船検:30日以内の改善で部分再検査
- 車検:即日改善可能、当日再検査
使用制限
- 船検切れ:航行完全禁止
- 車検切れ:公道走行禁止(私有地は可能)
更新通知
- 船検:JCIから事前通知
- 車検:所有者の自己管理
検査の難易度
- 船検:専門知識必要、セルフ検査は困難
- 車検:ユーザー車検の敷居が低い
これらの違いを理解することで、船検の特性を把握し、適切な準備と対応が可能になります。
船検は車検以上に専門性が高く、海という特殊環境での安全性が重視されるため、しっかりとした準備と知識が必要です。特に小型船舶免許を取得したばかりの方は、船検の重要性を十分に理解しておくことが大切です。
まとめ

船検費用について、JCI手数料から代行費用、関連費用まで詳しく解説してきました。ここで重要なポイントを整理し、計画的な船検費用管理の指針をお示しします。
船検費用の全体像
- JCI手数料:11,600円~63,400円(船舶サイズ・検査種類により変動)
- 代行手数料:8,000円~35,000円(地域・業者により変動)
- 関連費用:30,000円~100,000円(上下架・法定備品更新等)
- 年間コスト:約15,000円~57,000円(6年サイクルで計算)
費用削減の5つのポイント
- セルフ船検による代行費用節約(最大35,000円削減)
- 複数業者の見積もり比較(10~30%の費用削減)
- 事前メンテナンスによる一発合格(再検査費用回避)
- マリーナ割引サービスの活用(10~30%割引)
- 検査時期の調整(オフシーズン・平日割引)
船舶維持費における船検費用の位置づけ 船検費用は年間維持費全体の2~5%程度に過ぎません。保管料、保険料、燃料費、メンテナンス費用を含めた総合的な予算計画が重要です。
計画的な船検管理のために
- 検査時期の3ヶ月前からの準備開始
- 法定備品の有効期限管理
- 定期的なメンテナンスによる突発的な整備費用の抑制
- 信頼できる代行業者との関係構築
船検は単なる法的義務ではなく、安全な船舶運航のための重要な制度です。適切な知識と準備により、費用を抑えながらも確実に検査をクリアし、安心して海を楽しむことができます。
船舶購入を検討されている方は、購入価格だけでなく維持費全体を考慮し、船購入完全ガイドを参考に、自分に適した船舶選びを行うことをお勧めします。
計画的な船検費用管理により、より充実したマリンライフを楽しんでください。