「船の燃費ってどのくらい?」——購入前に必ず気になる点であり、購入後も維持費の中で意外に効いてくる項目です。
船の燃料消費は車とは考え方が異なります。船に「リッター何キロ」という指標はあまり意味がなく、「1時間あたり何リットル使うか」で考えるのが基本です。
この記事では、燃料消費量の計算方法、実際の釣行にかかるガソリン代、そして燃費を改善する具体的な方法を解説します。
船の燃費の考え方
基本は「1時間あたりの消費量」
船は水の抵抗を受けながら進むため、車のように距離あたりの燃費で語りにくい乗り物です。同じ距離でも、波・風・潮流・積載量で消費が大きく変わります。
そこで時間あたりの燃料消費量(L/h)で考えます。目安となる計算式は次のとおりです。
| エンジン種別 | 全開時の消費量の目安 |
|---|---|
| ガソリン船外機 | 馬力 × 約0.35 〜 0.40 L/h |
| ガソリン船内外機 | 馬力 × 約0.35 〜 0.45 L/h |
| ディーゼル船内機 | 馬力 × 約0.20 〜 0.25 L/h |
たとえば150馬力のガソリン船外機なら、全開で1時間あたり約53〜60リットル。かなりの量です。
実際は「巡航速度」で走る時間が長い
常に全開で走ることはありません。実際の運航では、全開の60〜70%程度の回転数(巡航域)で走る時間が最も長くなります。この領域では消費量は全開時の4〜6割程度に収まります。
| 運転状態 | 150馬力での消費量の目安 |
|---|---|
| アイドリング | 約1〜2 L/h |
| 低速(トローリング) | 約4〜8 L/h |
| 巡航(60〜70%) | 約22〜32 L/h |
| 全開 | 約53〜60 L/h |
馬力別・1時間あたりの燃料費
マリンガソリンを1リットル200円と仮定した場合の目安です。
| 馬力 | 巡航時の消費量 | 1時間あたりの燃料費 |
|---|---|---|
| 2馬力 | 約0.5 L/h | 約100円 |
| 15馬力 | 約3.5 L/h | 約700円 |
| 60馬力 | 約12 L/h | 約2,400円 |
| 115馬力 | 約22 L/h | 約4,400円 |
| 150馬力 | 約28 L/h | 約5,600円 |
| 250馬力 | 約46 L/h | 約9,200円 |
| 300馬力×2基 | 約110 L/h | 約22,000円 |
※2026年時点の目安です。価格は地域や供給元によって変動します。
1日の釣行にかかる燃料費【実例】
ケース1:20ft・115馬力で近場の釣り
| 行程 | 時間 | 消費量 |
|---|---|---|
| 港からポイントへ(片道20分) | 0.33h | 約7L |
| ポイント移動・流し釣り | 1.0h | 約6L |
| 帰港(片道20分) | 0.33h | 約7L |
| アイドリング・待機 | 1.0h | 約2L |
| 合計 | 約2.7h | 約22L(約4,400円) |
ケース2:26ft・250馬力で沖の釣り
| 行程 | 時間 | 消費量 |
|---|---|---|
| 沖のポイントへ(片道45分) | 0.75h | 約35L |
| ポイント移動 | 1.0h | 約15L |
| 帰港 | 0.75h | 約35L |
| 待機 | 1.5h | 約3L |
| 合計 | 約4h | 約88L(約17,600円) |
月2回出航するなら、ケース1で年間約10万円、ケース2で年間約42万円。維持費の中で無視できない金額です。
マリンガソリンはなぜ高い?
マリーナで給油すると、車用のガソリンスタンドより1リットルあたり30〜60円ほど高いのが一般的です。理由は次のとおりです。
- 供給量が少なく、輸送・貯蔵のコストが高い
- 桟橋での給油設備の維持費がかかる
- 取扱量が少ないため価格競争が働きにくい
携行缶での持ち込みについて
陸のガソリンスタンドで携行缶に給油して持ち込む方法もありますが、マリーナによっては安全上の理由から持ち込みを禁止しています。また、携行缶への給油は法令で定められた容器と手続きが必要です。必ず保管先のルールと消防法の規定を確認してください。
燃費を改善する7つの方法
①船底をきれいに保つ
最も効果が大きい方法です。フジツボや海藻が付着すると水の抵抗が増し、燃費が20〜30%悪化します。船底塗装を適切な時期に行い、シーズン中も定期的に清掃してください。
②最も効率の良い回転数で走る
船には燃費効率の良い回転域があります。多くの船で全開の60〜70%あたりが最も効率的です。燃料流量計があれば、実際に走りながら「速度÷消費量」が最大になる回転数を探してみてください。
③トリムを適切に調整する
船外機・船内外機の角度(トリム)は燃費に直結します。
- トリムが下がりすぎ:船首が沈み、水の抵抗が増える
- トリムが上がりすぎ:プロペラが空転気味になり効率が落ちる
- 適正:船体が水面を滑るように走り、速度が最も伸びる位置
同じ回転数のまま、トリムを少しずつ変えて速度が最大になる点を探してください。それが最適位置です。
④余分な荷物を降ろす
積載重量が増えれば燃費は悪化します。使っていない道具、満タンの生け簀の水、不要なアンカーなど、常時積んでいる物を見直すだけで改善します。
⑤プロペラを見直す
プロペラのピッチ(ねじれ角)が船の使い方に合っていないと、燃費も加速も悪化します。
- 回転数が上がりすぎる:ピッチが小さすぎる
- 回転数が上がらない:ピッチが大きすぎる、または船底が汚れている
全開時にメーカー指定の回転数域に入っているかを確認してください。欠けや曲がりがあるプロペラも効率を大きく落とします。
⑥エンジンを適切に整備する
- プラグの劣化:燃焼効率が落ちる
- 燃料フィルターの詰まり:燃料供給が不安定になる
- オイル交換の遅れ:内部抵抗が増える
⑦計画的に走る
無駄な往復を減らし、潮や風に逆らわないルートを選ぶだけでも消費は変わります。向かい波の中を全開で走るのは、燃料の消費が最も激しく、船体への負担も大きい走り方です。
燃料タンクの管理
「3分の1ルール」を守る
航海の基本原則です。
- 燃料の3分の1を往路に
- 3分の1を復路に
- 3分の1を予備に残す
向かい風・向かい潮の帰路は、往路の1.5〜2倍の燃料を消費することがあります。「行けた分だけ帰れる」とは限りません。
燃料の劣化に注意
ガソリンは3〜6か月程度で劣化し始めます。長期間乗らない場合は次の対策を取ってください。
- 燃料安定剤を入れる:劣化を遅らせる添加剤
- 満タンにする:タンク内の空気を減らし結露を防ぐ(金属タンクの場合)
- または空にする:携行タンクなら使い切る方が確実
- キャブレター内の燃料を抜く:小型船外機では特に重要
劣化した燃料はエンジン不調の主要な原因です。「久しぶりに乗ろうとしたらエンジンがかからない」の多くはこれが原因です。
ガソリンとディーゼルの比較
| 項目 | ガソリン | ディーゼル |
|---|---|---|
| 燃料単価 | 高い | 安い |
| 同出力あたりの消費量 | 多い | 少ない(約6〜7割) |
| エンジン本体価格 | 安い | 高い |
| 耐用時間 | 1,500〜2,500時間 | 5,000〜10,000時間 |
| 向いている使い方 | 週末の短時間利用 | 長時間・長距離の利用 |
年間の使用時間が長いほどディーゼルが有利になります。年100時間を超えるあたりから、燃料費の差が本体価格の差を埋め始めます。
よくある質問
Q. 燃料流量計は付けるべきですか?
燃費を意識するなら価値があります。リアルタイムの消費量が見えると、最も効率の良い回転数が分かり、実際に1〜2割の節約につながることがあります。近年の船外機は本体側で表示できる機種も増えています。
Q. ハイオクを入れるべきですか?
メーカーが指定する燃料を使ってください。レギュラー指定のエンジンにハイオクを入れても燃費は改善しません。逆に、ハイオク指定のエンジンにレギュラーを入れると不調の原因になります。
Q. 2ストロークと4ストロークで燃費は違いますか?
一般に4ストロークのほうが燃費は良好です。現在販売されている船外機はほぼ4ストロークです。2ストロークは軽量で加速に優れる一方、燃料消費が多く、混合油やオイル供給の管理も必要になります。
あわせて読みたい
- 船の維持費はいくらかかる?種類・サイズ別の年間コストと節約術を徹底解説
- 船外機・船内機・船内外機の違いとは?マリンエンジンの種類・価格・寿命を徹底比較
- 船底塗装の費用はいくら?塗り替え時期・塗料の種類・DIYの手順まで徹底解説
まとめ
燃料費は「走り方」で大きく変わる、コントロール可能な費用です。
- 船の燃費は1時間あたりの消費量(L/h)で考える
- 目安はガソリンで馬力×0.35〜0.40 L/h(全開時)
- 115馬力で近場の釣りなら1回あたり約4,400円
- 最も効果的な節約は船底をきれいに保つこと(20〜30%改善)
- トリム調整と最適回転数で1〜2割変わる
- 燃料は3分の1ルールで管理する
- 長期間乗らないときは燃料の劣化対策を
燃料計の数字を眺めるより、まず船底を見てください。そこに最大の改善余地があります。
※本記事の数値・価格は2026年時点の一般的な目安です。実際の消費量は船体・エンジン・海況によって大きく異なります。


